
昼も夜もない世界に貼り付いて震えている
地下鉄のホームへ降りていくと、タイルの壁になにか黒い紙のようなものが震えていた。だれも気にもしないそれは、よく見ると、アゲハチョウがしがみついているのだった。
よほど幸運な飛行コースを取るか、人の手を介しない限り、地上に出る手段は無い。昼も夜もない地下空間で、蛍光灯に照らされて、打つ手もなく限りある命を維持している。浮上できずに酸素ボンベが空になるまで呼吸を止めない哀れなダイバーのように。
ただし。
無機質なセラミックのタイルに貼り付いた自然の造形は、なんだかきれいだった。

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