
きれいな模様のこのガラスは、型板ガラスと言います。築30〜40年くらいの建物のお風呂場やお手洗い窓などに、よくはめこまれていますね。あつあつのガラス板が固まる前に、模様(型)のついたローラーを通して絵柄を付けたもので、1960年代に大流行しました。各地のメーカーが、こぞって独自の趣向を凝らした模様を開発していたそうです。
調べると、過去にはいろいろな模様があったんですね。
国立科学博物館−産業技術の歴史より抜粋
当時は珍しくもないものだったけれど、どうした訳か「かすみ」などの簡単な模様ばかりになってしまい、いつのまにかほとんどが廃版となってしまったようです。新品は海外のメーカーから輸入するしかない。今見るとなかなか新鮮ですよね。フロート板ガラスに模様のフィルムを貼り付けた装飾ガラスはよくありますが、立体的な光の変化は殆どありません。
佐藤氏はこれを自分の倉庫に何枚もコレクションして、ここぞという場所に使っています。しかしどれも廃盤商品なので、取り壊している民家に出会うと、業者さんに声をかけてもらってきたりするそうです。だから廃屋を見つけると、ぐわっと目の色が変わります。宝の山に見えるみたい。コストダウンとデザイン欲を同時に満足させる、すてきなアイデアです。
この貴重なガラスがまた、すぐ割れちゃいそうにもろくて、しかもカミソリみたいに鋭利そのもの。目黒の倉庫からそうっと毛布に包んで車に積み込み、船橋のガラス屋さんに持ち込んで、サイズ通りに切ってもらいます。船橋の近所には職人さんは2軒ほどしか見あたらなかったけれど、幸い訪れたお店は腕が良かったようで、みるからに仕事の堅そうな、浅黒く肉もがっちりとしたご主人です。このガラスをみると「おっ...懐かしいね、『銀河』だ」とつぶやきます。へえ、すてきな名前だ!
そして、数も多いし1時間ほど掛かるよ、と言うと、さっそくメガネをぐいとかけ直して、年季の入った真鍮のガラス切りを手に取りました。職人らしく、もろくて鋭利きわまりないガラスを、素手でひょいひょいと扱うのが、僕らには信じられない光景でした。
できあがったガラスはきちんと面取りもしてあって、もちろん一片のし損じもない。カット料金は、一枚あたり800円でした。佐藤氏は丁寧にそれを二階の寝室に取り付けてくれました。そのほかにも、洗面所の入り口は『クローバー』という模様も入れてくれました。普通の長い蛍光灯でなく、白熱灯タイプの、ひかりが一点に集中した光源の方がキラキラ感がでていいようです。寝るのが今からたのしみです。


コメントする