このところ通勤時間が楽しい。ふがしに勧められて先月から読み始めた池波正太郎著「剣客商売」のおかげなのだ。ちなみに「けんかく」と読むのが正しい。今朝も「十番斬り」を読んでいたら、目の前の若いサラリーマンが「新妻」に没頭していたので驚いた。先日は「天声人語」でも取り上げられていたし、そんなに流行っているのかな?

これは新版の絵。家にある昔の版の方が全然かっこいいな。
絶対斬られないスーパーマンのような剣士親子が、難事件怪事件を次々と切って捨てる勧善懲悪物語なんだけれども、料理や季節などの、江戸の情景がいい。作者の味覚や感性で練り込まれ再現される老練な描写のおかげで、読者は一気に話中に引き込まれる。主人に仕える武士ではなく、フリーの剣士という設定も後腐れない。60過ぎの老人が、「くせ者じゃ!」と看たらすぐに刀をぎらりと抜いて斬っちゃうのも社会的にどうかと思うが、勧善懲悪はスピードも大切なのだ。
一話ずつ読み切りなので途中からでも読みやすいし、春夏秋冬を通じて微妙にそれぞれの話がつながっているので、読み込めば読み込むほど江戸の世界が鮮やかに色付いてくる仕掛けになっている。DVDも出てるけど、文字で読んだ方が圧倒的に奥深い。作者には「鬼平犯科帳」や「仕掛人・藤枝梅安」などヒット作が多いから、一通り揃えればあなたも立派な池波ファン。番外編や料理関連の本まで集めれば立派な池波中毒。
作者が老人だからってのもあって、おじいちゃん向けの内容(「老人の春」ってシーンもちらほら)になっているんだけれども、若い人にも読みやすく、以外と主婦に愛読者が多いんだよね。一家全員池波ファンですって言うこともあるとか。ふがしも東京育ちだし、勤務先が浅草なので、江戸の描写が手に取るようにわかって楽しい、と目を輝かせて日々愛読している。
これにハマっていると皆そうなるように、知らず自分も剣の道を歩んでいるような気になってくる。なんだか無性に礼節を守りたくなる。日々鍛錬を怠らず油断せず、相手を敬い、弱きを助けたくなる。難しい事を言わないで、没頭しちゃったほうが大衆娯楽小説らしくていいのだ。落ち込んでいるときに読むには最高。入院している友人がいたら絶対に喜ばれると思うよ。






























