今年7回目になるシマノもてぎロードレースに参加した。これが人生初レース。テレビで見ているあのコースを走れるチャンスはめったにない。しかも自転車で走るってのがいいじゃないか。日本最高の自転車総合サイト、CyclingTimeにも写真が載ったよ!リンクは途中にあります。
朝の3:00に起床、4:00津田沼発。柏ICから常磐道路に乗り、水戸ICで下りてのどかな県道を30分、広大な森林地帯を切り開いた会場に到着したのが6:30頃。7:15まで試走ができるので、急いでコースに出る。さすがに国際サーキットだけに路面はなめらかでグリップも良く、非常に爽快。



今日の為に妻は心拍計をプレゼントしてくれて、お守りのようにハンドルの上で輝いている。アップのつもりだったけど、初めてのサーキット、あまり気持ちが良くて思わず飛ばしてしまい、これだけで心拍数が200を突破、己の心臓に不安を覚える。

出走直前、気付いたら前輪がフヤフヤ。なんと試走でこんな小さな塗膜片がタイヤに刺さってパンクしていた。急いでチューブ交換、予備を持ってきていて良かった。

復活!
スタートラインは皆無言で集中する。BGMとマッサージオイルの甘い香りが漂って、独特の雰囲気だ。スターターのカウントダウン。「30秒前」…「10秒前」…「5秒前」…静寂ののち、バーンと号砲が鳴った!と同時に、カチャカチャカチャカチャッとクリートをはめる音が沸き起こって一斉に自転車列車が動きだした。
今回の目的は「先頭集団に可能な限り付いていく」こと。力を温存して中途半端な順位を得るよりも、少しでもレースのスピードを体で覚えるのだ。スタートは後ろの方に位置していたので、中切れを恐れて急いで前方に上がる。レースのノウハウなんて殆どないので、目の前で繰り広げられる戦いに遅れないように付いていくので精一杯だ。



集団は一見一糸乱れぬ走りだから、仲良く走っているように見えるが、実は全然違う。中に入るとそこは怒号と衝突に満ちた激しいせめぎあいが繰り広げられている戦場だ。お互いの距離は数センチ、回転する前輪と後輪が完全に重なり合った状態で、時速50km/hでコーナーになだれ込む。競争と信頼が共存する異常な世界だ。お互いのラインが交差し、タイヤがずるずると滑ってハンドルやホイールがカシッカシッとぶつかり合う。足元のすごいスピードですぎていくアスファルトは、転倒すれば殆ど無防備な皮膚をおろし金のように削り取って行くだろう。隣の選手がよろけたのに驚いて避けると、後ろにくっついていた人が罵声を浴びせて来る。命懸けだ。単車や車のように、車体を使った無理な突っ込みは危険でできない。
ツインリングもてぎは、オーバルコースとロードコース、その他ダートやトライアルなど様々なコースを持った、モトGPやインディージャパンなどの世界的なレースも開催されるホンダの国際サーキット。コースはロードコースを反対周りに周回する。スタート地点からS字を抜けると延々と続くダウンヒルストレートの登り。自分はそこで遅れないようにしっかり回しながら付いていく。みんなは意地でもアウター固定の人が多いが、プロのようなスピードはないし、自分は脚力が無いのでおとなしくインナーでくるくる回す。登り切ったらターンして今度は緩い下り坂。ここはエアロホイールの自分にとっては回復区間だ。そのあと数度コーナーを回ってファーストアンダーブリッヂをくぐり、短いストレート。ここは向かい風になってあとのスプリントに響くので、人の後ろに付いて無駄足を使わないようにする。そしてホーム裏ストレートは追い風で集団はスピードを上げて一列になるので、前の方にいなければ置いてけぼりを喰う。そして最終コーナーを回って最後のストレート。一周4.8kmを6周する28.8kmのレースだ。

F-1中継のようにオーロラビジョンに映し出される自分。 六番手につけてドキドキしてる。
向かい風区間は誰も先頭を引かないので前方に行けるが、お陰で集団のペースが上がらない。三周目、よし!力が余っているうちにやるか!と「初参加で初表彰」を目指して周回賞を取るべくメインストレートでアタックしてみる。しかしやっぱり全然敵わず6番手くらいでラインを通過…。チームの連係プレーはほとんど無く、個人と個人の戦いだ。コーナーを立ち上がるたびに周囲からカンカカンカン、と変速の音が響きアドレナリンが吹き出す。アタックする選手がいたら食らいついて行こうと決めていたが、協力し合って逃げを打つ選手はいず、幅の広いコースもあって集団は終始ばらけない。それでも気が付けば100人中30人近くがタイムオーバーで自転車を下ろされていたし、スピードは常時50km/h近く出ている。固まって空気抵抗を避けて疾走すれば、鋭利な真空の剣になった気分。モータースポーツにはない快感だ。 妻の姿を確認して、手を振る。真新しい心拍計は、表示が大きくてとても見やすいぞ!でも、数字の意味がわかんないぞ!

CyclingTimeの写真:先頭集団、真ん中の青と白ジャージ、青メットが自分。
CyclingTimeの写真:ずれたアームカバーが内職チック。後ろのオレンジのメットが優勝者
五周目の上り坂、周りの選手を見るとアウターのままで重そうに漕いでいるのが多い。そのせいか先頭の数人がすうっと逃げそうになっている。ここで逃げられたら非力な自分は絶対に追いつけない。逃すか!とギアを上げてダンシング、頑張って先頭で追いかけ、続く下りで捕まえる。自分のうしろに100人が連なっているのはちょっと気分がいい。足に少し乳酸が貯まってきたが、すぐに収まった。

5周を終えてただいまの順位、なんと7位!人生初のレースなので訳が分からない。これが実力なのか、それとも皆は足を貯めて虎視眈々と狙っているのか。しかし自分の足はまだいける。心拍も180〜190で安定。果たしてこの数字がいいのか悪いのか、使い始めて1時間の自分には判らないのが一番の問題だが、なぜか希望が確信に変わった。これはいけるんじゃ!?入賞できる!いや、する!
ところがそこに落とし穴が!最終回、上り坂の位置取り合戦でダンシングをした瞬間、右のふくらはぎがピシッと痙攣!やっちまった、焼き付いた!悶絶しそうな痛みを耐え、その先の下りでストレッチして回復を図るが踏ん張りが利かない。おまけに集団は一気にスピードを上げ、活性化する。こ、こいつら、やっぱり今まで隠していやがったのか…それとも自分が失速しているのか。パワーが出ないのを単車とセガラリーで鍛えたコーナリング技術で補いながら食らいつく。ペダリングが乱れて周囲から罵声を浴びる。ごめんよ〜カンニンや〜!
そして遂に最終コーナーを抜け、ストレートに入った!皆一斉にギアをかけてダンシング!痛みをこらえながらふくらはぎを固定して太ももだけで回してがんばったが、川の流れが自分を追い抜いていくように、次々と抜かされていく。余力があるのに踏み込めないこの悔しさ!ああ、夢の初レース初入賞がさらさらと指の隙間からこぼれ落ちていく…。数人抜いたが、苦闘の甲斐無く集団に飲み込まれてゴールラインを越えた。結果は無残にも59位。

タイム:42:24.19
トップからの差:5.892秒
平均時速:40.75 km/h
悔しいけど、これが今の実力なんだろう。意外にも脚が攣ったのにトップから6秒以内だった。でもそもそも攣ったのは絶対的な筋力不足。太股もそうだが、ウェイトトレーニングが必要だ。
しかし大部分をトップ集団に喰らいついていった為、当初の目標は達成できた。あの目もくらむようなスピード感を体験できただけでも貴重だった。それにこの思わぬ健闘で、たった1人の応援団はドキドキハラハラの大興奮だったそうで大喜びだった。応援ありがとうね、聞こえたよ。
帰りにホンダミュージアムを探検。たまらんね、ここは。






負けちゃったけど30kmくらい走るだけじゃ全然疲れないので、帰ってからきゅうりを植え替えた。骨組みを組んでマルチする。マルチというのは作物の周りをわらなどで覆って雑草避けと乾燥を防ぐことらしい。戦う農夫ってちょっとかっこいいかも。

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