ケツの小さい話

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土曜日は出勤だった。
ウチの会社のカレンダーは実にケツが小さい。
3連休とかあると次の土曜日は出勤で、休日数のつじつま合わせするのだ。
非常にストレスが溜まるカレンダーだ...信じられないケツの小ささだ!


小さいといえば、もう一つそんなケツを見つけた。
日曜日に行った自転車ショップのことだ。
ちょっと前置きが長いのはご容赦を。

 
いつも行く花見川は、途中から新川と名前を変えて佐倉の印旛沼にさかのぼり、利根川につながる。
走りやすいサイクリングロードだけに、スポーツモデルに特化したショップもいくつかある。
その中の一軒、印旛沼のすぐ近くにあるTという店に行ってみたのだ。

明るい店内は、ロードとMTBの完成車とホイールやウェアなどがバランス良く配置され、
見るからにスポーツショップって感じだ。
扱いはキャノンデール、トレック、ピナレロ、クラインなど高級ブランドが殆どで、
ジャイアントやスペシャライズド、アキコーポレーション系のGT、ルイガノなど
価格がこなれた量産メーカーは扱ってもいない。
客層を聞けば実業団の選手、トライアスロンの選手が大勢で、かなり本格的。

お気に入りのショップを探し続けている自分としてはちょっと嬉しくなった。
やはり有閑店長のポタリング指南的うんちく道場みたいなショップは
「元」体育会系の自分にふさわしくない。
全てを自転車に賭ける選手のようにどっぷり漬かるのはムリだが、
限られた時間の中で己の限界に挑戦するには、それなりに高い温度が必要だ。
心の「お気に入りゲージ」が少しずつ上がっていく。

よしよしならば朝練にも参加してやろうかと若い店員に話しかけてみる。
集合場所は印旛沼の双子公園、田圃のあぜ道で一周3kmほどの
周回コースを設定し、レベルに併せて3つくらいに集団を形成、
1時間、約30kmくらい走ったらあとは個々人で、という内容。
ただ集合時間が8:00というのがネックだ。
津田沼から佐倉まで、慢性的渋滞ゾーンがいくつもある。
6:30位には出ないと間に合わないのだ。
30分で行ける幕張で走った方がトータル2時間は多く走れる。

うむうと渋面を作ると、店員はならばと自転車のセールスに入る。
キャノンデールの軽くて強靱なフレームはヨーロッパでも作れない、
素材が宇宙船のアルミ、塗装はあのクラインと同じ等々...。
厳しい販売ノルマで知られるメーカーだけに、売り込みも気迫がこもる。

ふんふんと頷く俺にコーフンした彼は、
新車でも15%引き、さらにウチで買うとメンテ代一切タダ!と言う。
これはちょっと魅力的だ。
出先で安心して修理出来るのは大きなメリットだ。
心の「お気に入りゲージ」がぐんぐん上昇する。
だが次の言葉に俺は耳を疑った。

「ウチはママチャリなんてパンク修理も断ってるんですよ」と
彼は誇らしげにいったのだ。
えっと聞き返すが、本当に断っているらしい。
忙しくてそんなヒマは無い、と笑っている。
まるで「そんな下賤の乗り物には触れたくない」とでも言わんばかり。
こんな店が本当にあるんだ...「お気に入りゲージ」はしゅっと消えた。

俺はガキの頃、数キロ先の保育園までママチャリの補助椅子で通っていた。
雨の日も雪の日も、死んだばあちゃんとじいちゃんが交代でペダルを踏んでくれた。
高校の通学に買ってもらった初めての自転車もママチャリだった(すぐにMTBになったが)。
生活の何処かかで錆びてガタピシ言っても文句は言わずに走っていた。

ショップの彼らは違うのだろうか?
彼らを支えて育ててくれた人達は?
彼らの母親はスタンドも無いレーサーで夕食のおかずを買いに行くのだろうか。
彼らのおじいさんは通勤で泥よけも無いMTBに乗っていたのか?
突然のパンクに困り果てた経験は無いんだろうか?
BMWやポルシェのディーラーだって軽自動車のパンク修理はしてくれる。

自転車店である以前に、困った人も助けられないようなオトナなんですか、と
フンガイした俺は店長を捕まえて言った。
店長は、ここはスポーツ専門店だということをアピールしたいのだと言い、
姉妹店にはママチャリを扱う店もあると弁解した。
俺は自分のなるしまのロードを指さし、ここの店はどんな自転車でも手抜きせずに
直してくれるよ、と言って店を出た。


快晴に恵まれた日曜日は、絶好の自転車日和。
なんだかすっかり冷え込んだ空気を吹き飛ばすように
平日の深夜にシコシコ手入れしたロードで、40km全開で走った。
あの店もケツが小さいが、それにフンガイする俺もケツが小さいな、と考える。
よし、いつかあの店をママチャリ修理するように店長を改心させてやるぞ。
いや待てそうするにはここまで乗って来てわざわざパンクさせたいといけない...。

ベアリングにまでバラして組み上げたホイールは無音で永遠に回転を止めない。
デュラエースのワイヤーに交換したダブルレバーはなめらかにカチカチ決まる。
サイズ違いだし古くて重い自転車だが、そこらのフラットバーやMTBには絶対に負けない。
問題があるとすればエンジンだけだったが、きつい向かい風でも30km/hで巡航できた。
モモとふくらはぎがぱんぱんになって意識が朦朧とするまでもがいたら、
イヤな気分はすっかり吹き飛んでいた。

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このページは、mimitubが2004年10月18日 13:02に書いたブログ記事です。

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